1990年代初頭まで、カンボジアは米作中心の典型的な農業国でした。およそ工業と呼べるものは少なく、わずかに住宅建設用のレンガ工場、木材加工場や外国人観光客向け土産物の家内工業があったくらいでした。
このことを端的に表しているのが、カンボジアの工業を司る役所の名称が「Ministry of Industry & Handicraft(工業・手工芸省)」であったことです。これは約30年にわたる内戦の結果、国内の生産設備やインフラが大きく破壊されたためでした。
今日、カンボジアの工業は大きく発展していますが、この転機となったのは1996年に米国、欧州から付与された一般特恵関税制度・最恵国待遇でした。
これにより、カンボジアからの輸入品に対しては関税免除もしくは低率関税が適用されることとなり、カンボジアには海外からの縫製工場設立が急増しました。縫製業から始まったカンボジアの工業も現在では製造分野も広がり、工業とサービス業の分野がGDPの75%を占めるまでに至っています。
工業・手工芸省も2020年1月には工業・科学・技術・産業革新省(Ministry of Industry, Science, Technology and Innovation)に名称変更され、カンボジアの工業のさらなる高度化、多角化を目指しています。